ばるーん通信6号
第6号(令和5年4月1日発行)
施設長着任のご挨拶
「マザー」こと 松隈智子(50)
〈経歴〉 | 1996年 佐賀大学教育学部 同年 佐賀県警少年補導職員拝命 2017年 佐賀県警少年サポートセンター補佐 2019年 公認心理師資格取得 |
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〈資格〉 | 小学校教員免許 上級心理カウンセラー メンタル心理カウンセラー 公認心理師 ビリーフチェンジセラピスト |
初めまして。
令和4年12月に佐賀県警を退職し、令和5年1月からシェルターの施設長として着任いたしました。
佐賀県警時代、約25年間、少年の立ち直り支援の専門職として子どもたちに携わってきましたが、管理職になってからは、何故か自分の心が満たされず、「もっと子どもたちとの時間を過ごしたい。私が手を差し伸べたい。もっと子どもと触れ合いたい。」という思いが強くなり、モヤモヤを払拭しようと一念発起して、この場所に飛び込んできました。
飛び込んで約3ヶ月が経ちましたが、毎日、子どもの笑顔に触れる度に喜びを感じさせてもらったり、ここを卒業する時に「ありがとう、ありがとう」と言って泣いてくれる子どもの姿に感動したり、私は、この場所で本当の自分を取り戻していると感じています。
私が「ばるーん」で最初の自己紹介をした時、「マザーテレサが好きなので、マザーって呼んでください!」と言ってしまったのですが、今では本当に、子どもたちや職員から恐れ多くも「マザー」と呼んでいただいています。
私には2人の息子がいます。
30代後半になり、どうしても娘が欲しくなり、子どもを授かったのですが、その時、仕事のストレスで目が緑内障になって視野を失ったばかりか、お腹の子どもをストレスから守ることができず、心臓が止まってしまい、流産してしまいました。
「ばるーん」は、女の子を保護する施設です。
私がここに着任してから、不思議なことに子どもが次々に入ってきてくれ、私の「娘」になってくれました。
そして、私に「マザー、マザー」と言って甘えてくれました。
私は、私の娘になるはずだった子どもがこのような形で、私の娘として帰ってきたのではないかと、胸が熱くなり、涙が止まりませんでした。
ここで出会った一人一人の可愛い娘たちに感謝の気持ちでいっぱいです。
まだまだマザーテレサへの道のりは遠いですが、どんな子どもたちも価値があり、ありのままで生きていていいのだということを私の持てるすべての力を振りしぼって伝え、一人も取り残さないという思いで支援をしていければと思っています。
私たちの活動には、皆様からの温かい支援と協力があって成り立っています。
この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。
子どもからのメッセージ
(娘が退所前に書いた「手紙」です)
マザーへ。
マザーテレサも昔の偉人達も、色々な努力をしてこれたことが、本や今を見てわかる。
言葉の大切さや言葉に救われたっていう、言葉の偉大さが分かって良かった。
多くの言葉から人って変われるんだなって思えた!
人が傷つく言葉を平気で言ってた自分が恥ずかしいんだって気づいたことで、今後も成長できたらいいな。
ここで、マザーに出会えて、色んなスタッフさん達に出会えて、大人は味方だって教えてもらった。
口だけな大人も、自分のことしか頭にない大人も、色んな大人がいたけど、ここのばるーんのみんなは子ども第一で、笑顔がいっぱいで、明るく、おもしろく、いい人たちがいて、そこで暮らせるありがたさと幸せを実感できた。
本当にありがとうね。
マザーも初めて会った時は警察ってので少し抵抗があったけど、また、会いたいって思ってくれてて、会えた瞬間に、神様が会うべき人として会わせてくれたのかなって思えた。
神様に感謝!
これから絶対恩返しするから、みんな見守っててね!
大きくなって帰ってきます!みたいな(笑)マザー泣かないでね(笑)
どん底から救いの手を出してくれて、大切にしてくれて“ありがとう”ここのママたちが大好きだ よ!!
体には気をつけて、これから来る子どもたちをまた、元気にして笑顔いっぱいにさせてあげてください!
16日間、本当にありがとうございました!大好きだよ!
ダイヤモンドの原石A子より
子どもたちとの暮らしの中で
令和4年度中は、延べ11人の子ども(娘)が入所し、ここを巣立っていきました。
娘たちとの暮らしの中から、スタッフが感じたことを綴っています。
世界に一つだけのパズル スタッフT・M
「何をしようかな・・・。」
入所してきた子どもたちは、入所した初日は緊張して周りをうかがっています。
スタッフはどんな人?先に入っているあの子はどんな子?私は何をしたらいいのかしら・・・。
叱られない かな。私は存在していいのかしら?
体中がセンサーになったみたいに、色んなことを考えています。
今まで自分の居場所がなかった。心を開放することができなかった。怯えて上目使いになっています。
すると、スタッフから「何かしたいことはない?あなたがやりたいことを一緒にやってみよう!」と声を掛けられ、ここでは自分らしくしていてもいいのではないかと思い始めるのです。
A子もそうでした。
入所したすぐは、ご飯を食べながら、マザーの肩で泣き続けていたけど、スタッフと暮らす中で、少しづつ笑顔が出てきました。
「絵が得意」「何か作るのが好き」そんなA子の興味を知ったスタッフが「パズルをしてみない?」と声を掛けました。
「面白そう(^^)」取り掛かったのはいいけれど、小さいパズルのピースを我慢強くはめていくのに慣れていない A子はイライラしてしまいます。
スタッフから「いいんだよ。自分のペースで。一人じゃないよ。」と言ってもらっても、なかなかはかどらない A子でしたが、スタッフがはめたパズルが完成近くになり、ここまで寄り添ってくれたスタッフに何とか報いたい!そう思いたったA子は、担当のスタッフが休みの間に、「よ~し!」と言って一気にパズルを作り上げたのです。
でも、でも!
最後のピースが見つからない!!
A子は、集中力で張りつめた気持ちと、もうすぐで出来上がるといった高揚感から、一気に気持ちが落ち込み、泣き始めてしまいました。
「イライラする!誰が触ったの?」A子の張りつめた感情が爆発してしまいました。
そんな騒がしいさなか、A子の心の中を知ってか知らずか、新しい娘が入所してきたのです。
B子は、「よろしくお願いします。」と言っている先に泣いているA子がいるので、戸惑ってしまいます。
スタッフが床をはいつくばって何やら探している雰囲気に、思わずB子は「どうしたの?私も探します。」と言って、自分のことはさておき、パズルのピースを探し始めてくれました。
しかし、どんなに探しても、その、小さなピースは見つかりませんでした。
そこで、スタッフとA子は考えて、考えて、段ボールで型を取り、色を付け、木工用ボンドでふくらみを付けて、無くなったピースとそっくりのピースを作り、パズルが完成したのです。
そしてそれは、スタッフと娘たちとの優しさと思い出が詰まった「世界に一つしかないパズル」になったのです。
娘たちはどうなったかですって?
A子はB子の、B子はA子の事を思いやりながら、パズルのピースをはめたかのように、暖かく穏やかな日々を過ごしてくれました。
パズルのピースが、皆の心を繋げてくれたお話でした。
子ども担当弁護士(コタン)の先生と
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佐賀 子どもシェルターばるーんのスタッフからみなさまへ
日々のご報告とご支援への感謝、そして子どもたちの日常を綴った「ばるーん通信」のバックナンバーもご覧ください。
みなさまからのご支援や温かいお気持ち。全部子どもたちに伝わっています。
直接言えない子どもたちからの「ありがとう」を、このばるーん通信に込めました。